モーツアルト ピアノソナタ2

◆ピアノ・ソナタ第7番 ハ長調 K. 309
ピアノ:リリー・クラウス(7,8,9番)

マンハイム楽派カンナビヒの娘のために書いた作品で
仕事探しの旅で滞在したマンハイムで完成させている。
第1楽章冒頭のテーマ・・・どこかで聴いたような気がするが。
原型は演奏会で即興で演奏されたというが、このテーマはモーツアルト
の頭の中にふっと沸いて出てくる自然な音階なのかもしれない。
2楽章のゆったりとした旋律の流れがなかなかいい。そして3楽章では
ソナチネのようなわかりやすいメロディラインで自然と耳に染み込んでくる。
演奏のリリー・クラウスの若き日のぴちぴちとした弾きっぷりも魅力的であった。
◆ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K. 310
この曲の作曲年は、次の9番より後の1778年で、7月に亡くなる母を気遣う
不安な気持ちが曲全体にあふれている。途中長調に転じても明るさに陰りがある。
母を失った状況をザルツブルクの神父に宛てて「私は母の手を握って、話しかけましたが、
母には見えも、聞こえもせず、何も感じませんでした。そんな状態のまま、5時間たって、
10時21分にこときれました。」と書き綴っている。
22歳のモーツアルトが父親と遠く離れて病に伏せる母を看る不安と焦りが3楽章に
はにじみ出ているようで、この曲の背景を知っていると何とも物悲しくなってしまうが
そんな中にあってモーツアルトの心の声の旋律は美しい。
ちなみにリリー・クラウス版には年代順に収録されていて、7−9−8となっている。
◆ピアノ・ソナタ第9番 ニ長調 K. 311
底抜けに明るく感じられる曲で、7番と双子と称されている。3楽章の小気味良いメロディ
ラインは魅力的だが、どうも曲全体が7番よりも軽い感じがする。この曲を作曲した頃
カンナビヒ邸で下品な言葉を言い過ぎて反省したとモーツアルトが綴っている手紙があるよう
だが、ちょっと調子に乗っていたのかな・・・
7番から9番までを「作品4」として、のちに出版されている。