ベートーヴェン ピアノソナタ6

◆ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 「幻想風ソナタ」 Op. 27 No. 1
ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ

本来なら、この「幻想風ソナタ」という名称は、2曲目すなわち14番の「月光」も
あわせての名称なのだそうだが、14番は「月光」が定着していて、もはや「幻想風
ソナタ」という名称はこの13番に限られているらしい。
1楽章冒頭から、霧の中をゆっくりと逍遥するようなメロディから始まる、まさに幻想風
な出だしともいえるが、やや単調かと思えば、第2楽想では雄大な風景が見えてくる。
不思議な気分の散歩である。第2楽章はやや重い足取りで、ごつごつした岩山を登っているような
感覚になる。3楽章は旋律の起伏を楽しめるが、すぐに最終楽章へとつながる。意気揚々と
広い高原を自由に歩き回る・・・そんな曲であり、さわやかでもある。何回かバッハ風の
旋律もありさまざまな色彩を放つ。この楽章がお気に入りである。
◆ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 「月光」 Op. 27 No. 2
ピアノ:アルフレッド・ブレンデル

この曲は有名すぎるのだが、正直真正面からじっくり聴いたことが少ない。今回、何人かの
ピアニストで聴いてみた。1楽章の情景からこの曲に「月光」と名づけたのはwikipedia
よれば、『ベートーヴェンの死後、1832年にルートヴィヒ・レルシュタープが第1楽章について
ルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」とコメントしたことに由来する』ということだが
2楽章以降は、月光とはまったく印象が異なる。
特に好きな3楽章は激しい情念そのものである。途中の旋律を「どこかで聴いている」と思って
いたが、交響曲第2番の1楽章後半に似たような旋律があるのを思い出した。
この曲は1801年に作曲されているが、交響曲2番は1802年であるから、ふとこの旋律が
出てきたのではないかいなと思っている。やっと似たような旋律の正体がわかって安心して寝ることが
できる・・・