ベートーヴェン ピアノソナタ10

土日と仕事で家にこもってしまった・・・唯一の楽しみで
ベートーヴェンピアノソナタの続きを聴いて過ごす。
◆ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 「ワルトシュタイン」 Op. 53
Pf 児玉麻里

まるで汽車を思わせるようなリズムの上に主題が踊る。題名はベートーヴェン
パトロンであるヴァルトシュタイン伯爵に献呈したことからであるが、他にも
献呈した曲がある中で、やはり大きな意味づけのされた曲ということだろう。
20番のソナタが練習曲風の小さな曲だったのに比べて、スケールが大きく
当初予定されていた2楽章はあまりにも長大だという友人の批判を受け、別の曲として
独立させ、全体の構成を図りなおしたという。独立した2楽章はアンダンテ・ファヴォリ
ヘ長調 / Andante favori WoO.57。換わりに当てられた2楽章はのんびりとしたというより
やや瞑想的な曲であるが、切れ間無く移行する3楽章は分散和音伴奏の上に鐘の音を連想される
主題が鳴り響く。この主題を変化させながら曲はダイナミックさを増しながら終曲へと向かう。
児玉の演奏は1楽章の力強さと3楽章の大きなスケールが見事に表現されている。
◆ピアノ・ソナタ第22番 ヘ長調 Op. 54
Pf アニー・フィッシャー

2楽章構成のこじんまりとした曲だが、これがなかなかいい。実はシューマンも絶賛したそうな。
1楽章はメヌエット風の主題と力強い第2主題を繰り返すが、今までのソナタには無かった斬新さ
が強く感じられる。第2楽章はまるでバッハの平均律のような風格を持たせながら、一瞬たりとも
スピードを緩めることも無く突き進むパッセージ・・・怒涛のような音の嵐だが、そこには規律があり
聴くものの方がこの曲に正対せざるを得ない緊張感がある。
◆ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 「熱情」 Op. 57
Pf ウィルヘルム・ケンプ

第1楽章はさすがに交響曲5番を同時に書いていた時期なのか運命の動機を思わせる4音が印象的。
この激しさを自分はうまく受け入れられずにいるのだが、ベートーヴェンはこの後にこのような激しい
ソナタを書いていないところからすると、これが最高潮の熱情を注いだ作品とも言える。
好きなのは3楽章である。どことなくショパンを思わせる・・・といってもショパンはこの曲の6年後
に生まれるのだが・・・うねるように押し寄せる旋律の波がいい。そして最後半に出てくるやはり
英雄ポロネーズを思わせる旋律。利き所満載の3楽章はじつに面白く、何度聴いてもいい。
改めてこの3楽章を意識して聞くと、この曲のショパンに与えた影響の強さを感じる・・・・