読了 シェイクスピア『タイタス・アンドロニカス』タイタス・アンドロニカス (白水Uブックス (6))作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志出版社/メーカー: 白水社発売日: 1983/10/01メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る

シェイクスピア全作品中、最も残虐で暴力に溢れているという悲劇、復讐劇。
ローマ帝国の英雄タイタスの凱旋とともに始まる物語は、人望も厚かったタイタスが
皇帝の座を譲るも、譲った皇帝が戦利品として連れ帰ったゴート族の王妃に惑わされ、
王妃とそのムーア人情夫の策略によって翻弄される姿が描かれる。それにしても、
騙すなどは序の口で、最愛の娘を手篭めにされた上に舌と両手首を切り落とされたり
冤罪の息子を許す代償として自らの手首を切り落とすなど、次から次と血みどろの
世界が繰り広げられる。故に近代になり劇としての上演はなかなかされなかったらしいが、最近は
日本でも蜷川氏の演出などで上演もされているらしい。
劇中、ゴート人の王妃とムーア人の情夫との密通により生まれる子どもの肌が黒かった
ことが重要なポイントとなる。調べたらゴート人はゲルマン民族系で白色人種、ムーア人
北西アフリカのイスラム教教徒系でどちらかといえばアラブ系。故に肌の色が見るからに
黒かったというような表現はどうなのだろうか?
それはさておき、この徹底した残酷な劇のモチーフ、当時のエリザベス朝では受けに受けた
というのが定説で、公開処刑に黒山の人だかりができたという時代を反映させている作品である。
最後の場面では、途中あまりにもかわいそうな扱われ方をするタイタスの肩を持ち「いいぞ
こらしめてやれ」と考えている自分も、エリザベス朝にあっては公開処刑を見に行っていたかも
しれない。あなおそろしや・・・・