読了 シェイクスピア『間違いの喜劇』間違いの喜劇 (白水Uブックス (5))作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志出版社/メーカー: 白水社発売日: 1983/10/01メディア: 新書 クリック: 12回この商品を含むブログ (12件) を見る

シェイクスピア最初期の喜劇作品である。
モチーフは生き別れになった双子の兄弟が再会するもの
だが、シェークスピアが参考としたのが古代ローマの喜劇作家
プラウトゥスの同様のモチーフに双子の召使いを加え、両親も
生き別れになったとすることで、物語の展開を複雑におもしろく
している。物語の冒頭、父親が7年前に生き別れの兄を捜して
旅だったのを追ってエフェソスという国に到着するも、敵対する
国からの訪問者ということで死刑を宣告される。
そこで、背景となる生き別れのいきさつが述べられるのだが、
偶然にも、行き着いたその国に兄が暮らし、弟も居合わせるた
ことで、兄を知る妻や召使いなどの人々が弟を兄と間違えて
混乱が始まる。兄と思われ、弟が訳も分からず兄の家に赴く場面
では、壁越しに兄や召使いが「俺の家だ入れろ」と叫べば、
「おまえは誰だ」と追い返され、町中では買った品を渡した、
もらっていないと警察沙汰になる始末。生き分かれた兄を捜して
放浪する弟だから、周りの人々が自分を他人と勘違いしている
状況から、うりふたつの兄と間違っているのではないかと
思わないのもおかしいが、気づかないが故の混乱劇。
たわいもない喜劇だが、結構楽しめる作品である。
最後は生き分かれた、父と母、兄弟、召使いの兄弟それざおれが
めでたく再会しハッピーエンドとなる。
まだ若かかりし頃のシェイクスピアの喜劇第1作目。
劇中、女性の体を地球に見立てスペイン、フランス・・・と国を
並べ立てる中、アメリカという言葉が出てくる。
アメリカ大陸発見は1492年(コロンブス)なので、この作品が
できたのが書かれた1592〜4年は100年たっていて、シェイクスピア
当然知っていたのだろう。しかし、アメリカという表記が彼の作品に出てくるのは
この部分だけらしい・・・
登場人物の住む町として出てくるのが、主な舞台となるエフェソスとシラクサだが
調べるとエフェソスはアテネからエーゲ海を挟んで対岸になる現トルコの古都。
片や父親とそれぞれ弟が住んでいたシラクサは現シチリア島の古都であった。
物語の原型となったのが古代ローマの喜劇だけあって、その時代の地名が出ている。