フルート奏者殺人未遂事件

ドヴォルザークの8番は、チェロ弾きはきっと誰もが好きであろう。特に1楽章と、4楽章の主題は「おいらにまかせてね!」とばかりに、胸を張って弾くことができる。ボヘミヤの土の香りを漂わしながら、遠い昔幼かった頃をふっと思い出すようなメロディ。
チョン・ミョンフンはこの8番を、オーケストラにたっぷり歌わせていた。特に3楽章では楽員ひとりひとりが、メロディをそれぞれの声で歌っていたように思う。素晴らしい演奏であった。さて、フルートもこの曲では要所要所で素敵なメロディを奏でるが、特に目立つのは4楽章である。風の中を歌いながら踊るようなそのメロディは、冒頭ファンファーレ後のチェロ・コンバスヴィオラの奏でる第1主題のあとに出てくる。ところが・・・今、ジョージ・セルクリーヴランドの演奏を聴いているが、フルートはまあゆったりと歌っているのが通常の早さであるにもかかわらず、今日はめっちゃくちゃにそのフレーズをテンポが速かった。ただでさえ息をつく間もないフルート独奏であるからして、すさまじい速さとこのフレーズの長さから、フルート奏者は最後の数小節には必死の形相であった。あと4小節あったら倒れていただろう・・・そのくらいすさまじかった。よくがんばったフルート!
演奏後、割れんばかりの拍手に応えながら指揮者は、フルートを立たせ労をねぎらっていた。それを見て、指揮者も彼のつらさがわかっていたことを確認した。
そして、聴衆の歓呼に応え、アンコールは3楽章であった。また、その時の演奏者たちののびのびとした演奏の楽しそうなこと・・・聴いている方も楽しくなった。こっちの3楽章のほうが良かったかも・・・今日は、とてもいい演奏会であった。ブラヴォー!
最後に・・・今日のコンサートは「東欧の鼓動〜チョン・ミョンフンドヴォルザーク」というテーマであったが、まさにフルート奏者の演奏後の鼓動はすさまじかったであろう・・・えへ