ノスタルジックな・・・

読了 太田 忠司 『予告探偵』

予告探偵―西郷家の謎 (C・NOVELS)

予告探偵―西郷家の謎 (C・NOVELS)

少し前だが、NHKで伊藤四郎が私立探偵になっていた番組があった。
たしか「名探偵・赤富士鷹」だったか。大正から昭和の初期あたりを舞台にしていたが
あのノスタルジックな場面設定についつい惹かれてしまう。宮部みゆきの『蒲生邸事件』
蒲生邸事件 (文春文庫)

蒲生邸事件 (文春文庫)

も226事件の頃を背景にしたものだったが、同じような気持ちを
抱いた。この作品は、終戦後の1950年を時代設定しているが、登場人物の会話などから
自分の好きな時代設定を感じさせながら物語が展開される。読み始めて暫くするうちに
昭和の初期の頃の設定だったよなぁなんて勘違いすらしていた。
氏素性の判然としない探偵 摩神尊(まがみたかし)に振り回される木塚東吾の語りで綴られる
物語は、まるでシャーロック・ホームズとワトソンだが、それがなかなか面白い関係を保ちつつ
事件の解決に迫っていく。2/3まで読んで『まだまだ前置きだなぁ・・・』と心配になるあたり
から、事件は急展開を見せる。そしてラスト・・・このラストには正直気が遠くなるようだった。
なぜか?あまりにも突拍子も無い展開であったからである。
この結末ってありなのか?あまりに、読み始めのノスタルジックな気分からのギャップに
暫くこの作品の真価について考えてしまった。推理小説を読みたがっている友人には、薦められない
・・・かな。
しかし、この作者については高く評価したい。読みやすい文体であり、尚且つ的確な情景描写には
拍手である。他の作品も是非読んでみたいと思っている。