読了 ジョン・ダーントン『ネアンデルタール』ネアンデルタール (ソニー・マガジンズ文庫)作者: ジョンダーントン,John Darnton,嶋田洋一出版社/メーカー: ソニーマガジンズ発売日: 2000/04メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る

ネアンデルタール人といえば、世界史に出てきた人類の祖先と思いきや最近の研究ではネアンデルタール人類は55万年から69万年前にホモ・サピエンスの祖先から分岐した別種で、現生人類とのつながりは無いらしいが、その生活や文化はきわめて人類に近かったらしい。結局、ネアンデルタール人は2万数千年前に絶滅してしまったわけだが、絶滅の原因はよくわかっていない。クロマニョン人との暴力的衝突により絶滅したとする説やホモ・サピエンスと混血し急速にホモ・サピエンスに吸収されてしまったとする説など諸説あり、謎も多い。
そこで登場するのが、人類と同時期にお互いに存在しあったというストーリーである。そして、この本においては現在も彼らはどこかに生き延びているという場面設定になっている。
彼らの特徴のひとつに、現生人類と比べ、喉の奥(上気道)が短く、分節言語を発声する能力が低かった可能性が議論されているというが、この小説の背景にじつはこのネアンデルタール人は言語を解さずに意思を伝え合っていたのではないかという仮説がある。
生き残るネアンデルタール人を探す科学者と、背後にネアンデルタール人の特質を研究しようとする組織のスペクタクルドラマ。それがこの本のテーマである。
読み進めていくうちに、自然とネアンデルタール人について詳しく知ることが出来るのも魅力のひとつかもしれない。
作者はピューリッツァ賞を手にしたこともある元新聞記者であるだけに描写は鮮明で実にリアルである。
果たして現代に生き延びるネアンデルタール人を発見できるのか・・・・ふむ