セザンヌ ブリヂストン美術館

実を言うとセザンヌは苦手な画家である。有名な静物やサント・ビクトワール山の風景画
もどうもぴんとこない。「自然を円筒、球、円錐として捉えなさい」と語り、後のキュビズム
に大きな影響を残したと言われるが、静物の遠近法によらない微妙なバランスがどうも理屈っぽくてあまり
好きになれないでいた。
まぁ、野球選手だって3割打てば上出来なので、セザンヌもいいなぁと思う作品がぼちぼちあるだけでもいいかな
と思う今日この頃でもある。好きな作品は『トランプをする人』モヂリアーニのような色彩と質感はなかなか。
さて、今日は、美術館所蔵のセザンヌ作品から「自画像と妻の肖像」「静物画」「風景画」「水浴図」
という4テーマにそっての展示であった。
その中で1枚『帽子をかぶった自画像』は、ぐっと迫るものがあった。未完の部分を残しつつ、自らを中央やや
左に配した構図、強い輪郭線はセザンヌならではの色合いとうまくあっていると思った。・・とセザンヌさんの
好きな絵が1枚増えました。
さて、ほかの展示室ではさまざまな自分の好きな作品が多くありました。
カミーユ・コロー 《ヴィル・ダヴレー》1835-40年 油彩、カンヴァス
コローの描く森の風景、木々の素晴らしさはただただため息である。特にこの作品で描かれている木々の緑は
深く、澄みきっている。静寂の中にあの森の香りが漂ってくるようである。森林浴・・・だ
フィンセント・ファン・ゴッホ 《モンマルトルの風車》1886年 油彩、カンヴァス
ゴッホの作品とは思えないきりっと引き締まった絵である。パリに来たばかりのころの作品ということだが
後期のあの壮絶な筆遣いとは違っていて、自分はこの絵が好きである。風車に描かれた旗のような赤と青
そして手前の黄色い小さな花の色がこの絵を引き立たせているように見える。
ジョルジュ・ルオー《ピエロ》1925年 油彩、紙
大好きなルオーの中でも好きな一枚である。ルオーの独特の太い輪郭線で描かれ、ピエロとは思えない
か弱い女性のような顔立ちは、うつむき加減でなにか物憂げである。悲しいのか、寂しいのか。
じっと見つめていてあげたくなる気分になってしまいしばらく動けなくなった。
■ウジェーヌ・ブーダン《トルーヴィル近郊の浜》1865年頃 油彩、板
モネの先生であったというブーダンの作品。横長の画面に社交場よろしく海岸で談笑する人々が描かれている。
この絵はまず筆遣いがすごい。空にしろ海にしろ、女性のスカートにしろ筆遣いだけで質感が引き出されている。
中央の男性と、右端の赤いドレスの女性によりこの絵のバランスが実に安定している。
壁に穴をあけ、その窓からタイムスリップして英仏海峡の海岸を覗くような錯覚さえする。
カミーユピサロ《ブージヴァルのセーヌ河》1870年 油彩、カンヴァス
いけないことだろうが画家の印象がどうも色として残っているようで、ピサロは淡い黄色というイメージだ。
なので、この絵を見たときに少し驚いた。ピサロの描いた風景は実にすがすがしい景色だ。川面に写る空や
川沿いの小道を行き交う人々。小舟を出そうとしているらしき川べりの人物は、静かな農村の一場面であり
愛情が感じられる暖かいものだ。ピサロ印象派の中でも年上で、温厚な性格だったというが、この絵に
それがあふれ出ているようだ。部屋の壁にかけておき、窓から差し込む日差しを浴びながら眺めていたい絵だ。
■岡田三郎助 『臥裸婦』1901年
今日、一番驚いたのがこの作品である。幻想的な光の中に横たわる裸婦を描いた作品であるが、その淡い光と
柔らかな弧を描くような女性のポーズが目に焼きついてしまう。その光は現実には再現できないであろう、岡田
氏のまさに想像の中で生まれた光なのであるが、今までこんな光をあてて描いた画家がいたのであろうか。
こんなにきらきらしている光を捉えた作品は初めてだ。すごいすごいすごい・・・この言葉に尽きる。


岡田作品以外はブリヂストン美術館のHPでご覧になれます。
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/collection/index.php?mode=cat