読了 西澤 保彦 『黄金色の祈り』黄金色の祈り作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1999/03メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る

以前『腕貫探偵』を読んで面白い視点に驚いたが、この作品では
西澤氏の書きっぷりにまたまた驚いた。
冒頭のミステリーを思わせるプロローグから、中学校のブラスバンド
青春ドラマ的な内容、自己欺瞞に陥り自暴自棄になっていく過程を描く
純文学的内容、そして事件解決にいたる推理もの、最後はディーバーのような
どんでん返しがあるという、まるで舐めているうちに色が変わるような「変わり玉」
のような作品である。中盤の自己を見つめ内面を吐露していく語り口はじつに重く
作者自身の生き方とオーバーラップさせながら内省している表現力は、作者の力量が
感じられた。この作家はさまざまなジャンルを書き分けることができるところがすごい。
ただ・・・・死に至る過程、直接の原因だけが読後も太いなのはどうも心残りであった。