第九♪

読売日響〈第九〉特別コンサート 東京芸術劇場
指揮:下野 竜也 s林 正子 ms坂本 朱 t中鉢 聡 b宮本 益光
合唱:新国立劇場合唱団
ベートーヴェン/交響曲第9番〈合唱付き〉
東京芸術劇場の1階k列で聴く。下野氏の合唱は初めてだったので
楽しみにしていた。今までも下野氏の指揮でいい演奏を聴いていただけに期待が
大きかった。楽器の配置は指揮者の左から第1ヴァイオリン、チェロ、コントラバス
ビオラ、第2ヴァイオリンという古典的な弦楽5部の配置並びで、中央奥に金管木管
そしてティンパニー等打楽器が最右翼の配置。後ろには合唱団員が冒頭から座って演奏開始。
第1,2楽章とも遅すぎず速すぎず、下野のきびきびした指揮によるきりっとした演奏である。
やや、ティンパニーが自席の丁度正面に位置しており、尚且つ壁のすぐ横だったためか
低音部の部分では、音の切れがすっきりしなく聞こえてしまっていたのが残念だった。
3楽章はゆったりとした、実に美しいハーモニーですばらしかった。久しぶりに聴いて「おお、こんな
メロディをビオラが弾いていたんだなぁ」とか発見も多く、この3楽章の魅力を十分に堪能させてもらった。
終楽章は下野の持ち味である切れを出しつつ、合唱団のすっきりとした歌いっぷりをうまく出させていた。
独唱者の声も実に伸びやかで、テノール、ソプラノの声は特に自分にとって心地よい響きであった。
驚いたのは4楽章全体を切れ目なく演奏していたことである。例えば後半4人の独唱者
の合唱のあとにコーダにつながっていくところも、間髪いれずにコーダへ向かっていった
のには、どきりとさせられた。
指揮者の意図があるのだろうかと思うまもなくコーダが畳み込むように演奏されたので、
まるでフルトヴェングラーの第9のようだと感じた。コーダのテンポは実に圧巻で
ヴァイオリン、ビオラは必死にボーイングしていたように見えた。
下野氏の小気味の良い、きりりと引き締まった第九はなかなか興味深く、面白い演奏であった。