読了4  楡 周平『ガリバー・パニック』ガリバー・パニック作者: 楡周平出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/07メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (2件) を見る

『Cの福音』で現代社会を鋭く描いていた楡氏に期待して読んでみたが
思いのほか、エンターテイメントに徹したユーモア小説であった。
物語は『Cの福音』を思わせる、リアリティある嵐の情景描写から始まる。
その嵐が吹き荒れた翌朝、千葉の海岸に突如、身長100メートルの巨人が出現。
前代未聞の事件に、警察や自衛隊が出動し大騒ぎとなる。ところが、巨人は
工事用ヘルメットに地下足袋といういでたちのおじさん。この辺りから、文体も
柔らかになって、どたばた調の物語展開になる。
この巨人をめぐり、国がどう対応し、巨人の生活をどう保障するかを読み手は
ありえない話にも関わらず考えはじめている。こんなときは、こうすべきではないのか
など、真剣に考え始めている自分に気づき「おっと、ありえないのに何考えているのだ」
とにやりとしてしまう。
楡氏らしからぬ作風に戸惑いながらも結構楽しめた。