読了18 瀧川政次郎『長谷川平蔵』
- 作者: 滝川政次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1994/07
- メディア: 文庫
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江戸市中の凶悪犯から恐れられていた顔とは反対に、罪を犯した者たちの社会復帰の
ために奔走したしたという側面を知ったのは、先日再放送のあった「その時歴史が動いた」
であった。その社会復帰のための施設が「人足寄場」である。そういえば以前に読んだ
山本周五郎の『さぶ』で描かれていた施設だと思い至ったが、その施設を作ったのが
鬼平とは知らなかった。
この本は、詳細な史料より長谷川平蔵の人物像や法制史からみた「人足寄場」について
書かれている。
人足寄場は、寛政2年(1790)に老中松平定信が火付盗賊改長谷川平蔵宣以−のぶためー
(父は長谷川平蔵宣雄であるため正式にはこう呼ぶらしい)の建議を容れて、隅田川河口の
石川島、佃島の間を埋め立てて作った、無宿人と軽犯罪で刑の執行を終えたものを収容して
各自の得意な手業(大工や左官、紙漉きなど)を習得させ、その工賃を積み立てて社会復帰の
更生資金とする場であった。期間は3年3ヶ月、成績によって期間が短くも、長くもなるという
不定期刑であった。
重罪を犯したものを厳しく咎めた長谷川平蔵が、無宿人の増加で悪化した治安維持のために
建てたこの施設は、歴史的に見ても画期的であったし、当時世界でも類を見ない画期的な
ものだったらしい。
長谷川平蔵は実家から近い江東区菊川に住居跡があり、深川界隈を闊歩していた
と思うと親しみも沸いてくる。(その屋敷はその後奇しくも遠山の金さんが住んだというのも
面白い)いずれ鬼平巡りでものんびりしてみようか・・・・