読了21 東郷 隆 『明治通り沿い奇譚』明治通り沿い奇譚 (新潮文庫)作者: 東郷隆出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1996/05メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見る

白金や広尾といった町を背景に、バブル崩壊前の古きよき時代の不思議な話。
中でも三助あがりの銭湯の主人が、高名な画家の残した「タイル絵」を巡る
出来事を描いた作品の中で、昔の銭湯の様子を薀蓄を混ぜながら描いた「タイル絵」
や、戦争が始まる頃、中国のおじいさんから譲り受けた未来の夢をみることができる
「枕」という作品が気に入った。東郷氏の語り口は、やたらと博学な部分が前面に出てくる
のがちょっと気になるものの、読後にはいろいろな知識が鮮明に残り、知識欲を十分に
満足させてもらえる。さすがに博物館学芸員から作家に転向しただけあり、中近東情勢など
には舌を巻いた。なかなか読み物的にも面白い作品であった。