読了36 薬丸 岳『闇の底』闇の底作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/09/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (41件) を見る

痛ましい事件の中でも、幼い子どもを陵辱し殺害する性犯罪は許しがたい
ものである。本作では性犯罪者に鉄槌を振るうサンソンと名乗る犯人の犯行が
描かれている。
性犯罪者は諸外国ではその再犯を防ぐことより、GPSで居場所を探ったり
近隣住民に性犯罪者がいることを知らしめたりするそうであるが、そのような
厳しい措置がなされていない日本においては、再犯が起こりうる環境にあるといえる。
性犯罪者の再犯率からいえば、諸外国の厳しい措置も頷けるが、人権問題としてはじつに
難しい。
サンソンはその手ぬるいとされる日本の法では、性犯罪を防げぬと自ら犯罪歴のあるものに
私刑を加えていく。
そんなサンソンを捕らえようとする刑事もまた、幼い妹を魔の手にかけられた経験の持ち主
であることろが本作品の核となっている。
巧みな心理描写によって、犯罪を犯罪によって防ごうとする犯人、哀しい過去を持つ刑事が
描かれ最後のクライマックスを迎える。
何ともいえぬ思いに駆られた作品でもあり、性犯罪を深く考えさせられた作品であった。
さて、この作品で犯人がかたるサンソンとは、フランス革命時に死刑執行を行ったサンソン家の
4代目お指すようである。調べてみると確かにシャルル=アンリ・サンソンは、フランス革命期の
死刑執行人。パリの死刑執行人を勤めたサンソン家の4代目当主として実在しており、ルイ16世
ロベスピエールといった著名人の処刑にほとんど関わったという。普段は独自の医療体系で医者を
しており、死刑執行人であったにも関わらず死刑廃止論者であったというから面白い。