読了73 『催眠術師』催眠術師作者: 清水義範出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1994/11メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る

某テレビのディレクターが、同じ会社の女子アナウンサーとの結婚を控える中
家族が宗教に凝ってしまっていることから、マインドコントロールについて調べていく。
結婚を控えながら、心の隅でひっかかるものを感じる主人公は、否定し続ける宗教にのめりこむ
妹と結局同じように、自分の精神もまた知らないうちにコントロールされていることに気づく。
この世の中、考えてみればテレビをはじめ、様々な媒体を通して我々が少なからず精神性に影響を
受けていやしないなか?そんなことに気づかされた作品である。
振り返ってみれば、イチゴ味とかオレンジ味のキャンディーも本物とはまったく違う味でありながら
イチゴだ、オレンジだと思っていたり、ウサギの絵を描けば多くの人が耳を2本立てた丸顔のウサギを
描いていたり、あたかもそちらの方が本物のように思い込んでいることは実に多い。
特定の国の名前を聞くと、それぞれにイメージを持っているのもメディアの影響が大きい。
デカルトの「われ思うゆえに我あり」とは決して過去の哲学的真理ではなく、いつの時代にあっても
心に刻まなくてはならないもののであろうと、そんなことまで考えてしまった。
物語の最後には、幼い頃の事件が、自分の結婚にまで大きく影響していることを知る主人公であるが
自分にも、今のパーソナリティを形作る要因があったのかも知れないし、深層心理に根深く残っている
のかもしれない。思い出すのが怖い・・・・