読了83 『阿弥陀堂だよ』阿弥陀堂だより (文春文庫)作者: 南木佳士出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2002/08/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 42回この商品を含むブログ (30件) を見る

最前線の医療現場で活躍をしつつ、自ら身ごもった子どもを死産で産んだこと
をきっかけに精神的に追い込まれてしまう妻。自分の小説は一向に世間から
認めてもらえず、妻の収入まかせになっていることを由とせざるを得ない夫。
この夫婦が選んだのは、夫の生まれ故郷の山深い過疎の村であった。
その村には長く村の阿弥陀堂の守をする老婆がおり、自然の一部となって
生活をしている。その生き方からにじみ出てきた深い言葉と出会ったのは
都会で病に倒れ声を失った若い女の書くコミュニティペーパーでの紹介文だった。
病を再発した彼女を救うために、以前のように最前線の医療現場に戻ろうと努力
する妻と、自らを死にぞこないとする老婆の必死の祈りの前に、何も出来ない
夫を描きながら、生きるとは、死とは何かをあらためて考えさせられた作品
であった。映画にもなったようだが、知らなかった。今度是非一度観て見たい
と思った。