読了110 北原 亞以子 『東京駅物語』東京駅物語作者: 北原亞以子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1996/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る

明治から昭和へ、東京駅と周辺の変貌を背景に、その時代時代に生きた
市井の人々の生き様を描いた短編連作である。
時代背景が明治や大正、昭和の初期が出てくるだけで、なんとなくノスタルジック
な思いに浸れる自分は、こんな作品がお気に入りになってしまう。
描かれる人々は、まさにその時代の社会を反映させて描かれ、自由恋愛だの
おのぼりさんだの、まさに時代を象徴するエピソードを絡ませ、物語により
深みを持たせている。
この本では、東京駅がどのように作られていったか、首都圏の交通網がどのように
整備されていったかもわかり、そんなところも興味をもって読んだ。
当初、丸の内側にしか改札が無く、一回りしなければ日本橋まで行けなかったなんて
じつにのんびりしていた時代だったのだが、今思えば、これだけ巨大な駅を構想した
先を見通したプロジェクト自体すごいものである。