モーツアルト ピアノソナタ3

◆ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K. 330
ピアノ:マルガレーテ・バビンスキー(10,11,12)

10,11,12はアルタリア社から出版されているが、その作曲は
自筆譜の筆跡や紙質から当初考えられていた時期よりも遅いことが判明
し、1778年と推定されているらしい。また、三曲を出版したことを示唆する
父親宛の手紙の内容とも一致するなど、さすが研究者のモーツアルト研究は
すごいなと感心させられる。
さて、この曲の魅力は何といっても1、3楽章の愛らしい旋律と2楽章の
上品さだろう。アインシュタインはこの曲を『モーツァルト、その人間と作品』
で『あらゆる音の「座りがよい」傑作であり、かつてモーツァルトが書いた最も
愛らしいものの一つである。』と評しているが、まさに天賦の才能が見事に現れた
傑作である。自分は特に3楽章Allegrettoの展開部に惚れ込んでいる。
終結部で終わるかのように見せて、じらすところは何度聴いても飽きない。
◆ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K. 331
小学生の頃、第1楽章の主題をリコーダーで吹いた様な気がするが、アイネクライネ
や40番のメロディのようにモーツアルトのメロディは、だれの曲ともわからないまま
自然に聞いて頭に入っているなとあらためて思う。
しかし、この曲やっぱり変わっている。1楽章に持ってくるソナタ形式の楽章がすっぽり
抜けている。急緩舞急のオーソドックスな形式から逸脱した構成で、緩の楽章から始まって
いる。それでも出版してしまうのも型破りなモーツアルトらしさかも。
久々に全曲を通して聴いてみると2楽章もなかなか味わい深い。しかし、ふと気がつくと
7番の1楽章の冒頭の主題そのままではないか・・・
http://ml.naxos.jp/work/127210 7番
http://ml.naxos.jp/work/288464 11番
3楽章はいわずと知れた「トルコ行進曲」変則的なロンドイ短調 2/4 複合三部形式
この曲を何度も聴いてA,B,A’・・・など構成を研究したのは中学生の頃だった。
◆ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K. 332
トルコ行進曲を聴いたあとに聞くと、妙に落ち着いた雰囲気で始まる冒頭だが、一変して
激しい感情の高ぶりをみせる。そして、それが過ぎると美しいメロディが現れ・・・
と思うと雲行きが怪しくなったり。それが妙に面白い。
2楽章の旋律はまさに天を仰ぎ星々を眺めるがごとしの美しい曲である。
3楽章の自由奔放な展開は実に破天荒だが、即興で楽しみながらこの曲を弾くモーツアルト
見えるような気がする。中間部の旋律は1回限りだがここを聞くのを楽しみに繰り返し聞いてしまう。
ある意味マニアックな曲なのかもしれない・・・曲の終わりはシューベルトソナタのように
終わりそうで終わらない妙な終わり方。絶対シューベルトは16番のソナタでまねをしている。