ベートーヴェン ピアノソナタ8番

うーん。この「悲愴」にはまってしまった。思えば1月からに聴き始めた
ベートーヴェンピアノソナタだが、20番まで記して後どうしてもこの
8番が気になっていろいろ聴き比べをして今日に至ってしまった。
特に一楽章を繰り返しいろいろなピアニストで聞き比べ愉しんできた。
スヴャトスラフ・リヒテル 1959 1楽章の演奏時間7'36
今まで聞いた中で一番の迫力があり、鬼気迫るものを感じる。それはリヒテル
野性味なのか。独学でピアノを自分のものにしてきたリヒテル独自の感性の叫び
なのか。聴いているだけで息が苦しくなるようで、そう何度も繰り返し聞けなのが
難点。
ウラディミール・ホロヴィッツ 1963 8'36
うーんなるほど、さすがホロヴィッツ翁といった堂々たる、ゆったりとした演奏で
たまにはソファーに身を沈めて落ち着いて聴いてみたい演奏となっている。
そんなに遅くないのに、ゆったりと演奏しているように聴こえる不思議さ・・・

ダニエル・バレンボイム 1998 9′22
これは、どうも受け付けない・・・もどかしさが先にあって落ち着いて聴くことが
できなかった。
◆ウラディミール・アシュケナージ 1972 8'50
優等生的な模範演奏といった感じがしてならなかった。もうひとつ面白みが欲しかった。
エミール・ギレリス 1973 9'10
これが今のところ一番自分にとってピンと来る演奏だ。序奏部から遅いのだが、そこには
哲学的な「ため」というのだろうか、聴くものに一瞬何かを考えさせるきっかけみたいな
一瞬がある。この序奏部の重みを、展開部で一気に解消し、上昇していく、その絶妙な
バランスが実にいい。それにほんのわずかにだがギレリスから一本気で偏屈そうな匂いも
する。それが、野暮ったいお洒落に生きることができなかったベートーヴェンと重なり
ベートーヴェンならこう弾いたのだろうなぁと思わせる。
◆ウィルヘルム・バックハウス 1958 6'12
一番最近繰り返し聞いていたのが、バックハウスである。バックハウス
ベートーヴェンツェルニー→リスト→ダンベールという直系の弟子だという。
しかし、その速さといったら尋常ではない。他の演奏に比べて6分台と抜きん出て
いるのがわかると思うが、冒頭から「そんなに急いでどこへ行くのか」と心配になる
速さである。しかし、展開部からの情感はさすが。一週間毎朝、毎夕通勤途中で聴いていたが
最近聴いていなかったお気に入りのギレリスの演奏を久しぶりに聞くとその違いがよく
わかった。その情感の豊かさ、艶っぽさがギレリスと違った味わい深いものである。 
あと、ルービンシュテインとポリーニは聴きたいのだが、なかなか手に入らない★