ベートーヴェン ピアノソナタ14(最終)

◆ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op. 110
この曲も後期の叙情性あふれる作品である。1楽章冒頭2小節の序奏の後に主題が
出てくるが、どうもどこかで聴いたようだと思っていたら、やっと思い出した。
シューベルトピアノソナタ第20番イ長調 D.959 4楽章のアレグレットに酷似している。
http://ml.naxos.jp/work/211002 http://ml.naxos.jp/work/99331
どうでしょう?
ベートーヴェンが1822年に出版していて、シューベルトの作曲が1828年なので
ヒントにしたのかもしれない・・・自分が好きなのは3楽章後半のフーガである。
聴き比べてみたが、1楽章の甘美な旋律、2楽章の湧き上がるような力強さとゼルキンがよかった。
3楽章のアダージョから4楽章のフーガはギレリスの演奏が良かった。
 
◆ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op. 111
1楽章の嵐のような激しさと極度の緊張感、2楽章の精神性の開放という両極をもって構成された
最後のソナタ。この作品まで40年の歳月かかっている。
1楽章冒頭の和音から他を圧倒し、2楽章の哲学的な表現とでも言えるかと思うポリーニの演奏が
1番気に入った。2楽章では内田光子のロマンティックな第1変奏や消え入るように終わるところも
なかなかいい。
 
この曲をもってベートーヴェンピアノソナタのすべてを聞き終えるが、改めて聴きなおしてみると
、ピアニストとして作曲した前期、ピアノという鍵盤楽器の進化とともに多彩な表現となってきた
中期、そして晩年に向かい高い精神性の表現としてあった時期を俯瞰することができたように思う。
音楽史的にいえば、モーツアルトハイドンの系譜からロマン派への橋渡しとなった作品群であり、
ハンス・フォン・ビューロがいみじくも「新約聖書」になぞらえた、まさにエポックメーキング
な創造物だった。うーん、なかなか面白かった♪