中村不折「たそがれ」

今回初めて見たがこれも良かった、しばし作品の前で動けなかった。たそがれの光の中
うなだれる裸婦を描いたものだが、消え入りそうな光の中に倒れこんでいる女性が
実に曰くありげで、切ない。漱石の「吾輩は猫である」の挿絵も手がけている不折の
構図と明暗を駆使した作品だ。書家でもあったと聞くが、この明暗は墨の世界を知る
からこそ出せるのかもしれない。