フェルメール展

国立新美術館の「アムステルダム国立美術館所蔵 フェルメール《牛乳を注ぐ女》とオランダ風俗画展」を
観に行く。

フェルメールの「牛乳を注ぐ女」は清楚で静かな作品だった。やはりレンブラント様の光と影の
オランダ絵画で落ち着いた光の中で生活者を静物画のように描いてあるような感じがした。
思いのほか小さな作品であり、制作過程の解説にあったように1枚1枚と丁寧に描くその姿勢に心打たれる。
壁の光を強く受けている部分から、暗くなる部分へのグラデーションや、光の強い部分を白い点で表現する
ポワンティエという技法による静物のリアリティ、一筆数万円といわれる宝石から作ったというウルトラマリン
の鮮やかな色彩は実にすばらしかった。
フェルメールの作品をいろいろ見比べてみると、左に窓を配した構図が意外に多く
窓が表現されていなくても左側からの光線がほとんどのようだ。
「ぶどう酒のグラス(紳士とワインを飲む女)」
真珠の首飾りの女」
「窓辺で水差しを持つ女」
「真珠を量る女」
「地理学者」
天文学者
「兵士と笑う女」
窓が描かれなくとも、左側からの光が当たっている構図は多く、フェルメールのひとつの特徴かも知れない。
帰りの電車で、一緒に観に行った画伯よりフェルメールがカメラを使って構図を決めていたという話を聞く。
調べてみると、果たしてそうであった。現在のように印画紙に写し取ることはさすがにしていないが
一種のピンホールカメラで画像を写し取っていたらしい。「カメラオブスキュラ」といわれる装置がそうだが
光学の発達により、画像が上下反転してしまうピンホールからレンズを組み合わせて画像を調整するような
ものがあったということである。
我々の見る世界は3次元だが、絵画は2次元でありまさにカメラオブスキュラに写った景色が2次元であり
それを写し取りながら、さらに様々な絵画技法により立体感を持たせる技巧が当時の絵画だったのだろう。
インターネットで調べてみると、この光学的な装置により光のフレアをフェルメールの絵画に見られる
光の強いところに打つ白い点になったという説もあり、実に奥深い。
フェルメールの面白さに気づくいい機会に出会えた。