プログラム

ベートヴェン「フィデリオ」序曲
出だしの主題で度肝を抜かれました。弦の迫力たるや、残響がはっきり残るのです。短い曲なので、徹頭徹尾パワフルな音でもうダッシュでした。すさまじい迫力のフィデリオでした。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
ピアノ独奏の上原彩子さんは、まさに天才です。ランランの演奏で感じたオーラを感じました。手の動きは天子の羽のようで、体全体でピアノを歌わせている様子を、見ているだけでも引き込まれてしまいそうでした。いや、すごいすごいすごい・・・・プログラムを見れば彼女の実力が、様々なコンクールで認められているとのこと。やっぱりなぁと合点する。2002年のチャイコフスキーコンクール1位ですものね。フィデリオの時の編成をやや小規模にして、マゼールも上原を上手に引き立てながら、まさに職人芸の3番を演出。いい演奏でありました。ピアニストが実に光っていた演奏でした。
ベートヴェン 交響曲第3番「英雄」
はじめの大編成に戻り第1楽章。はっきり言ってここはいただけなかった・・・弦が強すぎて管とのバランスが悪いような気がするとともに、アップテンポにうまく弦全体があっていないようなずれを感じた。テンポは速めで好きなのだが、全体が大味になってしまっている・・うむむ・・と思っていたら、2楽章はとても良かった。抑え気味の音に、全体のテンポもしっかりと、12本のコントラバスが不気味さを強調。まさに、恐ろしげな葬送行進曲である。こんな迫力のある2楽章ははじめて聴いた。そして、3楽章では、調子を取り戻したか、弦が実に生き生きと演奏。テンポもよく、気分も乗りに乗って聴くことができた。最終楽章は、もうこのオケ全員が調子を合わせ、豪快なじつに息の合った演奏を披露。マゼールがイタリア人気質をうまくコントロールしながら、それぞれの役回りを引き立てながら実に楽しそうな演奏へと導いていたかのようである。普段聴けないホルンのメロディやコントラバスのメロディを、わざと強調させて、演奏者自身も演奏を楽ませているのか、マゼールの演出もなかなかにくい。コーダとともに会場は割れんばかりの拍手と、ブラヴォーの声、まさに感極まる瞬間であった。
イタリア人演奏家たちも足を踏みながら、拍手を2拍子に変え、会場全体が一つになってマゼールを何度も呼ぶ、そして演奏家たちが続々と終結しアンコールへ。曲はヴェルディの序曲。この曲は今までの演奏と全く違って、まさにイタリアそのもの・・・・演奏者たちの演奏も乗りまくって、見ていて実に楽しい♪いや〜そういえばイタリアのオーケストラははじめてであったが、まさに他のオーケストラとは全く違った。一人ひとりの演奏家が、それぞれに実力を持ち合わせていて、それぞれが自分を出したがっているような、まるでやんちゃな演奏家の集まりなのかもしれない。そういう気質を、マゼールはうまく操縦して、素晴らしい演奏にまとめているのだなぁ・・・マゼールはどうやら30年もイタリアに住んでいたらしい。だから、イタリア人がよくわかっているのかなぁ・・・
前にマゼールがニューヨークフィルを振ったのを聴いたが、全く演奏スタイルが違っていた。時にはこんな演奏もいい・・・心の底から楽しめた、じつに愉快なコンサートであった。
追伸・・・イタリア人気質なのか?楽譜をめくる音を、全く気にしていなかった。そこは気になった。でも、全体として好きよ・・・