新日本フィルハーモニー

オーガスタ・リード・トーマス作曲 楽園への歌(2002)
ベートーヴェン作曲交響曲第9番ニ短調『合唱付』op.125
指揮:クリスティアン・アルミンク
独唱:日比野幸、加納悦子、トーマス・モーザー、 クレメンス・ザンダー
合唱:栗友会合唱団(合唱指揮:栗山文昭
この夏大きなイベントの企画が3つあるが、そのうちの一つを無事終えてほっとしながら
サントリーホールへ。実に久しぶりのコンサートになってしまった。
夏の第九も乙なもんだと、こころはうきうき。
最初の楽園の歌は現代的な曲であるが、ソプラノの独唱と混声合唱の魅力が出ている
不思議な曲だった。日本初演というこであるが、パンフレットにある作曲家のポートレート
若い女性。今「旬」の作曲家らしい。これからもちょっと気にしてみたい作曲家の一人に
加えた。
さて、今日の合唱であるが、今まで聴いたことのない迫力を感じた。
第1楽章から、その生き生きとしたテンポにアルミンクの若さ、エネルギーを感じただけでなく
その勢いは2楽章にも引き継がれ圧倒的なパワーで聴衆に迫ってきた。
ベートーヴェンがこの第九に挿入したシラーの詩の4つの部分を、アルミンクは第九の各楽章に
相当するという見解を持っているとのことで、アルミンクならではの第九の解釈が今日のこの演奏に
反映されていたのだろう。今までにない第九から受けるメッセージが、直に伝わってきた。
そのメッセージは実に心地よいものであったし、3楽章に至っては、弦群の旋律の美しさを、あらためて
強く感じ、涙が出てきてしまったくらいだ。至上の美しさとこの3楽章を誰かが例えていたというが、今日
まさにそれを感じた。
4楽章では、ウィーン出身のバリトンザンダーや、ドイツ語圏で活躍しているというモーザー
の本場のドイツ語による独唱は、やはりアルミンクの選んだ歌手なんだなぁと思いながら、これが本場の
第九なのかなぁと思いながら聴いた。
そして、今日大きな感動を与えてくれたのは、バックの栗友合唱団の素晴らしさだ。
実にいきいきと第九を歌い上げ、聞き手にその音圧が伝わってくる迫力があった。
そして全体のテンポは、第1,2楽章で見せたあの躍動感を引き継ぎ、時にはフルトヴェングラーのような
緩急を巧みに織り交ぜ、指揮者の思いが前面に出てくる感じを強く受けた。
最後のコーダに至っては、まさに白熱した演奏であって体が自然に前に前に向かっている自分に気づいたほどだ。
たたみ込むようにエネルギーをすべて放出し終わった演奏には、会場から割れんばかりの拍手が起こった。
素晴らしい、実にすばらしい演奏だった。
家に帰り、フルトヴェングラーの第九を聴きなおした♪