読了13 森鴎外『舞姫』現代語訳 舞姫 (ちくま文庫)作者: 森鴎外,山崎一穎,井上靖出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/03/01メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 20回この商品を含むブログ (29件) を見る

昨日は休日出勤で、面接官として夕刻まで勤務。帰りに図書館で本を眺めている中に
森鴎外の『舞姫』の現代語訳を見つける。後半には原文も載せてあるので、昔読んで
十分わかりえなかった部分もわかろうかと比較しながら読む。
解説も詳しく内容の理解に役立ったが、この作品に対する批評、いわゆる「舞姫論争」もあわせて
調べてみてさらに『舞姫』という作品を味わえた。
この論争は日本文学史上初の文学論争といわれているが論争が始まるきっかけとなった
石橋忍月の「舞姫」と題する批評は、この短い作品をより深く読むのに大いに役立つものである。
忍月のこの作品に対する論評には、主人公である太田豊太郎の功名か恋愛かの選択について、人物描写の矛盾点
、表題についてと、自分も読みながら感じていたことを鋭く突き、きちんと論考しているところが面白い。
また、反対に鴎外の反駁もまたこの小説の背景に迫るものとして大いに参考になった。
そもそもこの作品は、鴎外自身の身に起こった事件を元にしているという見方もされ、(実際には鴎外の場合
日本まで押かけられて大事件になったらしい)数年前に鴎外の故郷である津和野で感じた鴎外像ともあわせて
考えれば、じつに鴎外らしい作品という感がある。津和野の鴎外記念館で、生まれ故郷でありながら一度も
帰ってくることのなかったという記述を読んだときに、自分の鴎外像が出来上がってしまったのかも知れないが
この作品の中で、優しい面をみせながらも最終的には非情の選択をする主人公に鴎外そのものを感じる。
同時代に生き、同じくエリートとして生きた漱石とは180度違ったイメージがそこにある。
この作品の文学史上の意味合いはともかくも、鴎外自身の生きかたと照らした読み方をするのも一興である。
鴎外の生き方と鴎外の描いた人物像についてはじつに興味深いので、もう少し勉強してみよう・・・
論争について大変参考になったHP
http://www2.odn.ne.jp/~cat45780/bungakuronso.html
石橋忍月の論考原文
http://www.aozora.gr.jp/cards/000102/card538.html